【本校地歴公民科前田教諭】人命救助から広がった人のつながり・国際交流
2024年12月3日 10時21分 [松北36]11月3日(土)本校地歴公民科前田教諭は、バスケットボールの愛媛県選手権大会を終え、松山市から自宅のある今治市に向かって車を走らせていました。自宅近くにさしかかった18時ころ、ほぼ暗闇に包まれた道路沿いに、不自然に倒れた自転車を発見しました。車を止め駆け寄ると、顔面血だらけで、ほぼ意識のない外国人らしき人物が、横たわっていました。
すぐに救急・警察に連絡し、救命措置を行いました。まもなく救急車は到着したものの、駆けつけた救急・警察の隊員たちは誰一人英会話ができません。本人の発するわずかな声も確認できず、状況も状態もわからない中、前田教諭は、持ち前の堪能な英語力で、本人の名前、国籍、今治市にいるという状況を聞き取り、男性が持っていたスマホで、市内のホテルにいた男性の奥様に連絡を取りました。しかし、男性は生死に関わる瀕死の重傷で、緊急手術の必要があり、今治市内の病院では対応できず、愛媛大学医学部附属病院に救急搬送されることになりました。
男性は、オーストラリアタスマニアから日本を旅行中のブレイク=アンドリュー氏で、奥様とサイクリングをしながらしまなみ街道を訪れていました。
事故現場に駆けつけた消防・警察は、直ちに英会話での対応ができず、緊急対応として、ただの第一発見者に過ぎない前田教諭に愛媛大学医学部附属病院までの同行を要請しました。
ここでさらに臨機応変な対応で大活躍したのが前田教諭です。男性の奥様と連絡を取り、今治市内で合流し、さらに男性の加入している保険が、海外での緊急手術にも対応するかを海外の保険会社に連絡し、確認を取るなどしました。また緊急搬送された愛媛大学医学部附属病院では、突然異国の地で起こった夫の命の危機に直面し、混乱する奥様に代わって諸手続を手伝い、奥様のために病院近くのホテルを手配するなど、まさに「神対応」そのものです。その後、前田教諭が今治市の自宅に戻ったのは、日付が変わった午前3時でした。
幸いにも、緊急手術は無事成功し、アンドリュー氏は一命をとりとめました。手術によって彼の顔面から顎にかけて、7枚のプレートが埋め込まれ、発見があと1時間でも遅れていたら、彼は、異国の地で生命を落としていたかもしれないとのことでした。彼の重篤さは、緊急手術を担当した愛媛大学医学部附属病院の医師が、前田教諭に『御礼状』を贈っていただいたことからもわかります。
11月19日(火)、少し落ち着いた奥様が、本校の井上校長を訪ねてくれました。そして、「前田先生は夫の命の恩人です。彼や彼の家族、そして病院のスタッフや愛媛の方たちの優しさに心から感謝します。」と涙ながらに語ってくれました。
11月26日(火)には、退院したばかりのアンドリュー氏も松山北高に来ていただき、前田教諭が担当する「地理探究」の授業の中で、オーストラリアの地理・自然や生活について紹介していただきました。
今回、前田教諭の「神対応」から、命の大切さや医学の進歩、人の優しさや人のつながりの偉大さ、英語の大切さなどを学びました。授業での交流を終えて、前田教諭、アンドリュー氏夫妻、そして生徒たちも満面の笑顔に包まれました。
その日の午後、夫妻はきっと「愛媛の愛」を胸一杯に、前田教諭に見送られ、松山空港から帰国の途につきました。